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2008年11月24日

オオカミにカタルシス

つい先ほど、この本を読了した。
なんという物語だろう。乃南アサという作家は知っていたが、実は読むのは初めてなのだ。手に取った動機は、本作が「直木賞」を受賞した作品だからで、そうでなかったら、この作品と出会っていなかったかもしれない。
「凍える牙」は直木賞受賞作には珍しく(?)、いわゆる本格ミステリーに分類される作品であろうと思う。実際、作品も本格ミステリーの作法に則って進められるし、プロローグでいきなり深夜のファミレスで男が炎上するところから始まるところはミステリーの面目躍如であろう。
だがそれでは終わらない。それで終わっていたら、本作が直木賞を受けることもなかっただろう。

ややネタばれ気味になるが、本作品の一番の読みどころは、オオカミである。
ミステリーゆえの綿密なプロットに、オオカミが組み込まれた作品がかつてあっただろうか。そして、そのオオカミの心情にまで踏み込んだ作品があっただろうか。
オオカミの心情にまで踏み込める作家は、(きっと)多くない。もしかしたら乃南アサにしかできない芸当やもしれぬ。オオカミという「ヒト」ではない動物を、その心情・気持ちまで描き出すというすばらしいドラマツルギーとそこから迫りくるカタルシスにただただ呆然とした思いで読了した。

そして、読み終えて曰く、「なんという物語だろう」だったのである。
こうしたミステリーとして素晴らしい完成度を誇る「凍える牙」であるが、この物語にはもう一つのテーマがある。
一般に刑事という職業は、いわゆる捜査活動において複数人(通常は二人、と思う)で一緒に行動する。この物語においては、一度離婚を経験した、若い女刑事(若いといっても、それなりの経験を経ている。この設定も絶妙だが、その辺りは自身で読んでいただきたい)と癖のあるベテラン男刑事の組み合わせだ。この中で、この女刑事は、腹の突き出た、少し頭の薄い、世の裏側を多く見て少しばかり性格のひねた、人情派でありながら決して女に心を許したりしない、そろそろ若干の加齢臭も漂ってきそうな中年男刑事とのコンフリクトとも闘うのである。
それは、一般に男社会の最たるものと考えられがちな刑事社会において、女性が奮闘する中で抱える悩みでもあろう。そして、悩みつつ刑事としての矜持を持ち続け、そのモチベーションを切らすことなく、事件解決に奔走する彼女は、やがてオオカミとまで心を通わし、男顔負けの活躍をするのである。
今「男顔負け」と書いたが、この言葉には暗に“女性蔑視”の意味が含まれているであろう。つまりこの物語は、こういった言葉がまだまだ平気でまかり通る社会に、女性の視点から見た、女性のための重要なテーゼを提示していると思うのである。

今や「男女平等社会」などという言葉も少し苔が生えてきた言葉となりつつあるが、実情はそうではない。減らず口ばかりで情けない男(私もその一人かもしれぬ)が氾濫する世において、一方で自立し、そういった実質的な差別が未だ残る社会で、真に実力のみで闘う女性が多くなってきている現代にこそ、この小説は大いに存在価値が見出せる。
女性読者の共感は当然として、本作品は、情けない男の心に鉄槌を下す。だから、己が情けない奴と思う男性諸君(真に「情けない」奴(=男)は、実はそう自覚していないので、一番始末に悪いのだが……。一見謙遜しているように見えて、いざちょっと反撃を食らうと、(非を認める勇気すら持たず)自己弁護に走る輩等々……orz)、そういった人にこそ読んでいただきたい。
そうして自分なら、このオオカミに心を寄せねばならぬほどの孤独感に果たして耐えることができるか、自問していただきたいのである。

やや攻撃的すぎる解説がちょっとどうかなという感じはする。そして、私は決してフェミニストではない。
それでもこの物語を読んだ今、こう思わずにはいられない。
「強い女性(=すなわち現代のほとんどの女性)に刮目せよ。そうして、もう一度男を取り戻せ」と。


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この記事へのコメント
ジュポジュポ音立てながら腰振ってたらマムコから凄い量の潮と泡を吹き出すし!
あと目つきがやばいね、あれは完全にケモノの目だったよwちょっと恐かったしw
おかげで俺の中のM属性が目覚めちゃったよwww
ま、そんな訳で今日も行ってくるわ~(・∀・`)ノシ

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Posted by 渡辺 at 2009年06月03日 05:51
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