常夏の島、ニッポン

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2008年03月28日 01:47

いよいよ桜咲く季節となった。日本人にとって、入学、卒業で涙する季節でもあり、花見と称していい大人がドンチャン騒ぎを繰り広げ、辺りにゴミやゲロをまき散らすさわやかな季節でもある。
個人的には花を愛でる習慣もなければ、花(桜)の下で飲む酒がとりわけ旨いと感じる性質でもないので、通りすがりにそういった光景を冷ややかに横目で見ていることの方が多いのであるが。

とはいえ、やはり桜の花は何となく特別で、咲けば咲いたで何となく心が躍るものである。こんな私にも、少しは大和魂の血が流れているようだ。そして今年もその季節がやって来た。

気象庁は27日、東京と静岡で平年より9日早く桜(ソメイヨシノ)が満開になったと発表した。東京の満開は、昭和28年の統計開始以降、3番目の早さ。昨年との比較では、東京は2日、静岡は3日早い。

水戸では平年より8日、長崎県の厳原では1日早く、桜の開花宣言が出た。

27日の最高気温は、東京で平年より1・7度高い四月上旬並みの16・0度、静岡は0・1度上回る15・9度まで上がった。東京では絶好の花見日和の中、気象庁が定点観測している靖国神社の「標本木」で、職員が満開の基準となる「80%以上のつぼみが開いた状態」になっているのを確認した。


【産経新聞 社会面 3/28より引用】


ふと通りがかりの桜を見ると、確かにすっかり花が咲いている。ほのかに桃色の花は、優しくはかない。風が吹くたびにその花びらが舞い散って、いっそうはかなさを感じさせる。
はかなさとはすなわち「潔さ」と言い換えてもいいような気がした。そうであるならば、はかなさという心情は、日本人にマッチするだろう。元来「ハラキリ」の文化を持つ民族であるがゆえ。

一方で桜の花を愛でる習慣は、ニッポンという国の地理的、あるいは気象的条件がバックグラウンドにあることは疑うべくもない。つまり「四季」の変化があり、そのもっとも心地よいとされる春に咲くからこそ、桜はその花の美しさとともに愛されてきたのだろう。入学や卒業の時期をも春に合わせたのも、同じ理由からであるような気がする。

ではもし、その四季とその折々の季節に合わせた美徳を持ち合わせたニッポンが、仮に常夏の島国ということになった場合、いったいどうなるのであろうか……。
少し長いが、もう一つ記事を引用させていただく。

 東京都心では「熱帯化」が進む。自然に近いかたちで森を残してきた国立科学博物館付属自然教育園(港区)。中に入ると、ヤシ科のシュロが繁殖していた。園内1万本の樹木の2割を占めるまでになったという。実こそ結ばないがキウイも自生し、インコが飛び回る。

 萩原信介研究主幹は「シュロの若芽は冬の平均気温が4度以下になると枯れてしまう。ところが暖冬化が進み、枯れずに繁殖した」と話す。

 温暖化に都市特有のヒートアイランド効果が加わり、東京は今や地球上のどこよりも発熱が著しい場所になった。この100年間でニューヨークの気温は1.6度上がった。東京都心では、それを上回る3度の上昇が記録されている。

 夏には、謎の集中豪雨が新宿など都心西部を襲う。相模湾からの南風と鹿島灘からの東風がぶつかって上昇気流が起き、集中豪雨に見舞われる場所として以前から知られていた。しかし最近、海からの風が吹かない日にも集中豪雨が起きる。

 防衛大の小林文明准教授は「ビルなどからの人工排熱で大気が局地的に熱せられて上昇気流が起き、積乱雲が発生する」と解説する。

 発熱は、地下でも著しい。福島大の木内豪(つよし)准教授が都心13カ所で下水道の温度を調べたところ、この30年で年平均温度が4.8度、冬に限ると7度上がっていた。家庭でシャワーなど湯を使う量が増えた影響が大きく、人工的に発せられる熱の1割が下水に捨てられていると試算する。

 その結果、東京湾では冬の水温上昇も進む。東京都環境科学研究所の調査では20年間で2度上がった。プランクトンが大量発生して酸素欠乏の状態が続き、外来種の貝の異常繁殖など生態系にも影響が出ている。

 「東京ドーム0.7杯分の水を瞬時に沸騰させ、蒸発させることができる熱量です」。建築研究所(茨城県つくば市)の足永靖信上席研究員は、真夏の東京23区内で1日に排出される人工熱量を、そう見積もる。

 首都大学東京の三上岳彦教授は、25年ごろには東京都心でも最高気温が40度を超すようになり、50年以降はそれが毎年のことになると予測する。

 他の大都市でも、大阪市では昨年8月、最高気温35度以上の猛暑日が14日間もあった。熱中症患者は230人。春には、中心市街地の桜の開花が異様に早まっている。大阪府立大の青野靖之准教授の調査によると、繁華街の梅田では、3キロしか離れていない緑地の大阪城公園より4日も早くソメイヨシノが開花した年があった。

   ◇

 政府は04年にヒートアイランド対策大綱をまとめ、都市の人工排熱問題に取り組んでいる。主な対策は、省エネ、緑化、海風の利用だ。

 しかし、建築研究所の足永上席研究員は警告する。「緑化など熱を逃がす方法は対症療法にすぎない。都市に化石燃料を持ち込むのを減らすこと。太陽光など自前のエネルギーで都市を維持する仕組みを早く作らないと、大変なことになる」


【朝日新聞 文化・芸能面 3/28より引用】


気象庁では東京の桜の開花状況を確認するのは靖国神社の桜だという。しかし……だからといって桜の開花が早まったのは、何も参院選に大敗して、さっさとバックれた某首相が唱えた戦後レジームの変革に、そこに合祀された魂が反発したからではあるまい(それもあるかもしれないが……笑)。
上で引用した記事にもあるように、もはや首都トーキョーは四季の変化を楽しむ場所ではないのだ。もし楽しめるとすれば、トーキョーの中心、深い森と堀に囲まれたコーキョだけということになるのかもしれない。

このままいけばいずれニッポンも、少なくともトーキョーには、四季の代わりに雨季と乾季が交互にやってくる都市になるのかもしれない。そうしてスズメやツバメの代わりに極彩色の鳥が飛び交うようになる。海だって、美味しい魚がいなくなり、外道と称して捨てていたリリースしていた、観賞魚もどきの魚ばかりになってしまうことは想像に難くない。
暫定税率が撤廃されそうなこの時期、きっとCO2排出量も増えることになるのだろう。

そろそろ熱帯雨林地域の生活実態でも調査を始めようかな、と考える今日この頃である。
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